Massive Change と Design Quarterly No.4
友人の勧めがあってAmazonで購入。
カナダのデザイナーBruceMauの巨大プロジェクトというか、新しい概念の提唱というべき”Massive Change“について語ったのもの。
Massive Changeの公式web(http://www.massivechange.com/)の副題にはこうある。
“It’s not about the world of design. It’s about the design of the world.”
「これはdesignの世界の話ではない。世界のdesignの(世界をdesignする)話である」
これだけ大きな枠でデザインを取り上げたプロジェクトは無かっただろう。
しかしこれも逆の側面からみれば、designの定義についてある本であるとも読める。
まだ冒頭を読んだ程度での感想ではあるが、「designで世界を変える」という提示をしておきながらBruceはあえて話を始める前にdesignの定義を行っていない。これは実はこの本自体がdesignというtermの再定義を試みているからではないだろうかと思う。DesignQuarterlyの特集記事「マッシブ・チェンジの全貌」というBruce Mau Design(以下、BMD)へ訪問してのインタビュー記事ではマクドナルドの流通システムについて言及している。コカコーラの流通システムは非常に良くdesignされており、彼らはアフリカのど真ん中にコークを届けることが出来る、しかし国連機関が水を届けるのは非常に困難であるのはなぜか?という疑問を投げかけている。この問いの是非はともかくとして、この発言の中で使われている”design”という言葉は従来使われてきたdesignという言葉、少なくとも一般にカタカナ語でいう「デザイン」とは凡そ違う意味の言葉である。つまりBMDがMassive Changeを通して訴えいている”design of the world”とは今一般に認識さえているような意味での「デザイン」でもって世界を変えるというのではなく、むしろ「 x が世界を変える」という命題を掲げて、あらかじめ変数 x = design と置き、その命題を成立させることが出来るような意味こそがdesignである、とする考え方なのではないだろうか。
そういった意味において、この本は現在デザイナという職にある人たちにとっては夢のある話であると同時に非常に過酷な要求をしている本であるともとれる。というのもこの本でもって再定義されるであろうdesignという言葉は非常に広義の意味をもつものであり、それゆえデザイナには非常に多くの知識と学習を要求されるからである。それは例えばオーケストラの指揮者の様な立場であろう。指揮者というものは素人が一見すると痛そうな顔をしてただ白い棒を振っているだけの楽な人、という風に写るかもしれないが、現実には指揮者は全てのパートの譜面を暗記し、各プレーヤーの癖を把握し、それを一つの音楽として構築する非常に重要な役割を担った人である。BruceMauがMassiveChangeを通して再定義する”design”を行うdesignerという人は、非常にタフで知的で視点が鋭く、また複雑に絡んだ高次の問題に対して明確で具体的なソリューションをアウトプット出来なければならないだろう。
(つづく)

